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プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントとは?【事例でスッキリ理解】

 LINEの2019年12月期1Q決算は、純損失▲107億円の赤字でした。総務省の情報通信白書によれば、日本の10代~30代の90%超が利用しているコミュニケーションアプリ「LINE」。それにも関わらず、四半期で100億円以上の損失を計上した背景には、LINEの事業多角化戦略があります。プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントというフレームワークを使えば、LINEの経営戦略がスッキリ理解できます。

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プロダクトポートフォリオマネジメントとは?

 プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントとは、経営資源の最適な配分を考える為のフレームワークです。もともとは、戦略コンサルティングファームのボストン・コンサルティング・グループ(BCG)が提唱した戦略フレームワークです。複数の事業を持つ企業が、どこにリソースを投下するかは経営戦略上極めて重要な意思決定です。PPMでは、事業を「マーケットの成長率」×「自社のマーケットシェア」の2×2マトリクス図で整理します。

花形(成長率:高、マーケットシェア:高)

 花形に分類される事業は、高いマーケットシェアを獲得していることが特徴です。一方で、市場そのものの成長率が高いことから、競合企業の参入が多くなります。したがって、シェアを維持または拡大していくために多額の資金が必要になります。キャッシュイン、キャッシュアウト共に大きいのが一番の特徴です。

 LINEで言えば、キャッシュレス決済事業(LINE Pay)が花形事業にあたります。成長率が高く将来に大きな収益が見込める反面、PayPayを筆頭に、札束で殴り合うかのようなキャンペーン合戦が繰り広げられており、多額のマーケティング費用が必要になっています。

 

金のなる木(成長率:低、マーケットシェア:高)

 金のなる木に分類される事業は、花形事業と同様に自社の製品・サービスが高いシェアを獲得していることが特徴です。花形との違いは、市場が成熟しており成長率が低いことにあります。成長率が低いので、新規参入に対するインセンティブが低くなります。結果、シェアを維持する為に必要な設備投資、研究開発費やマーケティング費用は限定的になります。したがって、キャッシュインは大きく、キャッシュアウトは小さくなります。

 LINEにおいては、コミュニケーション事業が金のなる木にあたります。実際に、2019年12月期1Qにおいては、前年同時期+3.4%の成長に留まっています。LINEでは、コミュニケーション等のコア事業で得たキャッシュを、LINE Pay事業に戦略的に投資しています。

 

問題児(成長率:高、マーケットシェア:低)

 問題児に分類される事業は、成長率の高いマーケットにありながら自社製品・サービスのシェアが低いことが特徴です。積極的に経営資源を投下しマーケットシェアを獲得することができれば、花形事業に発展させることができます。将来的に収益が見込めるのであれば、まずはシェアを取りに行くことが目標になります。そのため、キャッシュインが少ない一方で、キャッシュアウトは大きくなる傾向にあります。

 LINEでは、2015年に買収した海外の音楽配信事業「MixRadio」を、買収後1年足らずの2016年に買収した事例が当てはまります。当時のメディアでは、海外の音楽配信マーケットはSpotifyを中心に競争が激しく、採算が合わないと判断されたことが原因と報道されました。

 

負け犬(成長率:低、マーケットシェア:低)

 負け犬に分類される事業は、市場の成長率、マーケットシェア共に低いことが特徴です。端的に言えば、市場競争に敗れた事業です。このような事業からは撤退することが第一の選択肢です。早期に撤退の意思決定を行い、経営資源を他の花形や問題事業に振り向けることで、長期的な収益源を確保することがベターです。

 

まとめ

 プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントのフレームワークを使うと、LINEが四半期で100億円以上の損失を出した理由がスッキリ理解できたかと思います。複数の事業を持つ多角化企業では、経営資源の配分に関する意思決定が複雑化しやすく、現状を整理する意味でもPPMフレームワークは有効です。

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