ドラッグストアの市場規模が7兆円を突破し、総店舗数が2万店を超える中で、各社薬剤師の確保が成長のネックになりつつあります。日本経済新聞によれば、2018年の薬剤師の有効求人倍率は5.22倍となっており、人手不足が続いています。(出典:日本経済新聞「ドラッグストア、消耗戦に 売上高増も利益減」)
ここでは、ドラッグストア各社の調剤比率、店舗の調剤併設率をランキング形式で紹介します。
ドラッグストアの調剤比率の推移(調剤売上比率)
調剤売上トップはスギホールディングス
上記は、総売上高に占める調剤売上高の比率を示したグラフです。ドラッグストア主要企業の中で唯一20%を超えたのはスギホールディングスでした。同社は、東海地方を中心に約1,200店舗を展開し、売上高4,884億円を誇る企業です。
スギホールディングスは利益率の高い調剤部門に強みを持ち、粗利率は29.1%と高い水準をキープしています。2020年度上期の決算では、純利益が17%増になるなど業績は好調です。
スギホールディングスが24日発表した2019年3~8月期の連結決算は純利益が
前年同期比17%増の104億円だった。同期間では3年連続で過去最高だった。
新規出店に伴う増収効果と、利益率の高い調剤部門の伸びがけん引した。出典:日本経済新聞「スギHDの3~8月期、純利益17%増 調剤部門がけん引」
スギHDを追う業界最大手のウエルシアHD
調剤比率16.7%で2位に位置するのはウエルシアホールディングスです。同社は売上高7,792億円で業界第2位の規模を持つドラッグストアチェーンです。2020年度には、売上高8.500億円を見込み、業界トップに立つものと見られています。
同社の決算説明会資料によると、調剤部門は売上総利益率(粗利率)38.1%で、全体の30.4%に対し相対的に高く、利益率の改善に寄与していることがわかります。ウエルシアHDの池野隆光会長は、ドラッグストア業界の成長要因の一つに調剤併設を上げています。
「ドラッグストア(業界の)成長の要因は食品の強化、調剤を併設する業態の増加、インバウンド(訪日外国人客)だ」。ドラッグストア大手ウエルシアホールディングス(HD)の池野隆光会長は、こう分析する”
出典:ニュースイッチ「ドラッグストアvs調剤薬局、激化する「処方箋」争奪戦の行方」
ドラッグストア主要企業の調剤売上構成比の推移は以下の通りです。
ドラッグストアの調剤比率ランキング
順位 | 企業名 | 2017年 | 2018年 | 2019年 |
1位 | スギホールディングス株式会社 | 21.3% | 21.9% | 21.6% |
2位 | ウエルシアホールディングス株式会社 | 15.6% | 16.5% | 16.7% |
3位 | 株式会社ココカラファイン | 14.4% | 15.6% | 16.4% |
4位 | 株式会社キリン堂ホールディングス | 8.9% | 9.4% | 10.0% |
5位 | 株式会社ツルハホールディングス | 9.5% | 9.6% | 9.8% |
6位 | 株式会社クスリのアオキホールディングス | 9.9% | 9.4% | 9.2% |
7位 | 株式会社クリエイトSDホールディングス | 7.5% | 8.1% | 8.7% |
8位 | 株式会社マツモトキヨシホールディングス | 8.0% | 8.3% | 8.3% |
9位 | サツドラホールディングス株式会社 | 4.2% | 4.1% | 3.7% |
出典:各社の有価証券報告書、及びIR資料
業界全体で調剤比率は増加傾向
上記を見ると、調剤売上高を公表している企業のうち、クスリのアオキホールディングスとサツドラホールディングスを除く全ての企業が調剤比率を高めていることがわかります。業界の成長ドライバーとして、今後も調剤の重要性は高まっていくものと思われます。
ドラッグストア各社の店舗調剤併設率ランキング
上記は、ドラッグストアの総店舗に占める調剤併設店舗の割合を示したグラフです。ここでも、50%を超えたのはスギホールディングスとウエルシアホールディングスの2社であることがわかります。業界最大手のツルハホールディングスは27.2%に留まっています。
スギ薬局は全店に調剤薬局併設へ
スギホールディングスは調剤併設率70%と高い水準を達成しており、同社は早期に全店への調剤薬局を併設する方針です。その為、同社は薬剤師の採用を積極的に進め、2020年春には採用人数を70%もアップさせる、としています。
スギ薬局を展開するスギホールディングス(HD)は全国に約1100店舗あるドラッグストア全てに調剤薬局を併設する方針だ。これに合わせて2020年春の薬剤師採用を前年比7割増の500人に増やす。顧客と対面で提供する健康・医療サービスを充実させ、競合他社との差異化を図る。
出典:日本経済新聞「スギHD、調剤薬局 全店に拡大 薬剤師採用7割増」
続いて、ドラッグストア各社の調剤併設率の推移を紹介します。
ドラッグストアの店舗調剤併設率の推移
順位 | 企業名 | 2017年 | 2018年 | 2019年 |
1位 | スギホールディングス株式会社 | 非公開 | 68.4% | 70.0% |
2位 | ウエルシアホールディングス株式会社 | 66.8% | 68.5% | 68.5% |
3位 | 株式会社クスリのアオキホールディングス | 46.6% | 44.8% | 45.2% |
4位 | 株式会社クリエイトSDホールディングス | 28.3% | 29.0% | 31.1% |
5位 | 株式会社ツルハホールディングス | 23.8% | 26.5% | 27.2% |
6位 | 株式会社キリン堂ホールディングス | 18.0% | 21.7% | 23.6% |
7位 | 株式会社ココカラファイン | 19.1% | 20.5% | 21.6% |
8位 | 株式会社マツモトキヨシホールディングス | 16.3% | 16.9% | 17.5% |
9位 | サツドラホールディングス株式会社 | 9.8% | 9.5% | 非公開 |
スギ薬局を展開するスギホールディングスはもちろん、競合他社も同様に調剤併設率を高める方針を採っていることが、上記の表からわかります。
ドラッグストアの商材は大きく分けると調剤、医薬品、化粧品、日用雑貨、食品の5つに分けられます。調剤部門は、この中でもトップクラスの利益貢献度を誇ります。その為、調剤比率の高い企業ほど粗利益率(売上総利益率)及び営業利益率が高い傾向にあります。
今後は薬剤師の確保がカギに
利益貢献度の高さから、ドラッグストア各社は調剤併設を進めようとしています。そうした中でボトルネックになるのが、薬剤師の採用、確保です。冒頭にお伝えした通り、薬剤師の有効求人倍率は5倍を超えており、人手不足感が強まっています。
今後は、各社の薬剤師採用の成否がその企業の成長を左右するといっても過言ではないのかもしれません。