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東証の市場再編の目的は?金融庁の会合のまとめ①

東証の市場区分の見直し、再編について、金融庁での議論が深まっています。ここでは、金融審議会の市場構造専門グループで検討された論点を整理していきます。

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金融庁・金融審議会「市場構造専門グループ」とは?

金融審議会「市場構造専門グループ」とは、日本の市場構造の在り方を検討し、専門的議論を深めるための会合です。その設置趣旨は以下のように宣言されています。

金融審議会「市場構造専門グループ」の設置目的

我が国の市場構造の在り方については、これまで東京証券取引所の懇談会において検討が行われ、本年3月27日に論点整理が取りまとめられたところです。

東京証券取引所を始めとする我が国の取引所の在り方は、我が国の市場そのものの在り方に直結することから、今後、金融審議会において継続的かつ専門的に議論を深める必要があります

このため、今後の市場構造の在り方について、学識経験者、経済団体、アナリストなど関係各界の有識者から提言を得ることを目的として、「市場構造専門グループ」を設置します。

金融審議会「市場構造専門グループ」の設置及び開催(第1回)について

「市場構造専門グループ」メンバーリスト

金融審議会「市場構造専門グループ」の構成メンバーは、学識経験者、経済団体、アナリストなど、関係各界の市場構造に関する有識者等専門家から構成されており、以下の通りです。

  • 神田 秀樹 / 学習院大学大学院法務研究科教授
  • 井口 譲二 / ニッセイアセットマネジメント (株)CCGO
  • 池尾 和人 / 立正大学経済学部教授
  • 翁  百合 / (株) 日本総合研究所理事長
  • 小林 喜光 / (株) 三菱ケミカルホールディングス取締役会長
  • 三瓶 裕喜 / フィデリティ投信(株) ヘッド・オブ・エンゲージメント
  • 高田  創  / みずほ総合研究所(株)副理事長 エグゼクティブエコノミスト
  • 松山 彰宏 / 日本経済団体連合会 金融・資本市場委員会資本市場部会長

東証が抱える3つの課題

第一回の会合では、東京証券取引所から現在の市場構造に関する3つの課題が提示されました。それは、①各市場のコンセプトが曖昧であること、②上場企業の持続的な企業価値の動機付けが不十分であること、③機能性と市場代表性を備えた指数が存在しないこと、の3点です。

東証の市場再編が必要な理由

  1. 現在の各市場のコンセプトが曖昧であること
  2. 上場企業の持続的な企業価値向上の動機付けが不十分である
  3. 機能性と市場代表性を備えた指数が存在しない

 

課題1:市場コンセプトが曖昧である

指摘:各市場の位置づけが重複している

各市場のコンセプトが曖昧であって、多くの投資者にとって利便性が低いという課題がございます。具体的に申し上げますと、現在、中小企業、新興企業の新規上場については、多くの場合、市場第二部、マザーズあるいはJASDAQの各市場に上場されていますが、これらの市場の位置づけが重複していてわかりづらくなっているという指摘がございます。

東京証券取引所・青オブザーバーの発言

指摘:上場企業に様々な水準でバラつきがある

市場第一部につきまして、上場会社の数が多いのではないかという声もよく聞かれますが、実際には、数の多さそのものというよりも、収益、時価総額、流動性、経営体制、ガバナンス、情報開示などに関しまして、さまざまな水準の企業が混在している状況にあり、市場のコンセプトが明確でなくなってしまっているというご指摘がございます。

東京証券取引所・青オブザーバーの発言

指摘:ガバナンスや情報開示のレベル差が大きい

スチュワードシップ研究会のほうですが、1部企業の数が多いということ自体が問題というよりも、質の低い企業が多数含まれているということが問題と認識しているということでして、コーポレートガバナンスや情報開示の面でより厳格な基準を適用されることが望ましいということで、指名委員会、報酬委員会の設置の推奨とか英文開示をおっしゃっていいます。

ニッセイアセットマネジメント・井口委員の発言

課題2:企業価値向上のインセンティブが機能していない

企業価値向上やガバナンス強化の動機づけ

昨今、多くの上場会社は、東証への新規上場後に市場第一部を目指されている状況でございまして、このため市場第一部へのステップアップは、上場会社の企業価値向上や、ガバナンスあるいは内部管理体制の維持向上の動機づけとしての機能、これが期待されるという面がございます。

東京証券取引所・青オブザーバーの発言

ガバナンスなどの質的基準も求めるべき

市場評価あるいは時価総額ということはすごく大事なことだとは思っておりますが、それだけでは不十分ではないかと思っている次第です。ガバナンスなどの質的な項目というのも考慮して、初めてここの定義にあるような国際的に投資を行う機関投資家の投資対象になるようなマーケットになると思っております。

ニッセイアセットマネジメント・井口委員の発言

利益水準とか時価総額のみならず、ガバナンスといった、そういった質的なところについてもきちんとした水準を求めていくということによって、企業価値を上げていくという方向に作用するような改革にしていくことが重要だと思います。

日本総合研究所理事長・翁委員の発言

グローバル基準のコーポレートガバナンス

東証の「関連データ集」という資料の17ページを見ると、現状でも外国法人が株式保有金額の30%以上を占めている。だから、こういう市場の設計に当たって、グローバルなコーポレートガバナンス水準なり、グローバルな機関投資家の視点というものに合わせるとすれば、ますますこのC市場的なものからは個人投資家が減って、外国法人が相当増えていくというトレンドになると見るべきなのか。

三菱ケミカルホールディングス取締役会長・小林委員の発言

有価証券報告書の英文開示も

年次の有価証券報告書の英文開示ということです。これはまさにC市場の考え方に書かれていますが、国際的な投資を行う機関投資家への情報提供には英文の有価証券報告書の提供というのは不可欠ではないかと思っております。

ニッセイアセットマネジメント・井口委員の発言

課題3:TOPIXに代わる指数が必要

TOPIXの構成銘柄は玉石混交

投資対象としての機能性と市場代表性を備えた指数が存在しないという点でございます。現在、東証では、市場第一部の全上場銘柄を構成銘柄とするTOPIXという指数を算出しておりますが、TOPIXの対象構成銘柄には、流動性が低い銘柄など、さまざまな会社が含まれているという状況にあります。

東京証券取引所・青オブザーバーの発言

S&P500のようなインデックス指標がない

東証では、JPX日経インデックス400やTOPIX500といった指数も算出しておりますが、これらをベンチマークとする投資家の方々はあまり多くない、比較的少ない状況でございます。例えばS&P500など諸外国の指数との比較におきまして、特に機能性という面におきまして適した指数が存在しないというところがございます。

東京証券取引所・青オブザーバーの発言

TOPIXの範囲と市場第一部の範囲を切り離す

市場構造のあり方を検討する上で非常に重要な出発点というのは、TOPIXの範囲と市場第一部の範囲を切り離す。そうすると、議論が非常にしやすくなるということがあります。そして、切り離したものはそれぞれが独立した規律のもと運営されるということが非常に大事だというふうに考えています。

フィデリティ投信・三瓶委員の発言 
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